【再】「蛇」=「地母神」性と「男根崇拝」の関係をのぞく

古代、蛇は世界中で信仰の対象とされていました。

 

wikipediaには、

 

【ヘビの姿は、男根、剣、金属(鉄)とも結びつけられることから男性神とされる一方、豊穣神・地母神の性格としては女性と見られることも多く】

 

の記載があります。私自身は蛇は男神の側面もあり、女神でもある「両性具有」の地母神エネルギーの象徴として捉えています。

 

ところが蛇崇拝のひとつの形として「男根崇拝」を唱える説が多々あり、以前から「なぜなんだろう」と感じていました。

 

調べてみると本来これは「生殖器崇拝」のことで、生物学的次元としての雄/雌範疇があり、そこからの「生殖器信仰」となるものなんだとか。これは「母神宗教」の形態のひとつ。「母神宗教」とは、古代オリエントからギリシアにかけて広まった母神崇拝の宗教の総称を指しています。ということは、本来は「男根」と「女性性器」とのペアの解釈がなされていたのではないでしょうか。

 

ではなぜあえて「男根崇拝」を強調しているのか。さらに調べてみました、こちらは『精神分析の始祖であるジークムント・フロイトは夢分析において、ヘビを男根の象徴であるとした』との記載がみつかりました。

 

また、『これに対してカール・グスタフ・ユングは、男性の夢に登場するヘビは女性であると説いた。』

 

ユングは大変優秀な弟子としてフロイトにかわいがられ、一時フロイトと蜜月時代を築きます。しかしフロイトがすべてのことを性にむすびつける傾向があったことから、後に二人は決別することに。

 

この「蛇」に対する見解だけでも二人の分析には大きな違いがあることがわかります。

 

フロイトは深層心理学の祖とも言える偉大な人物です。アシュケナジー系ユダヤ人としてオーストリアに生まれた精神医学者でした。フロイトの理論のベースにはバビロニア・タルムードがあったと言われています。

 

いわゆる善悪二元論、そして男性神を唯一絶対神=「父」とする思想が根底にあったととらえていいのではないでしょうか。

 

一方、ユングは父がキリスト教プロテスタントの牧師でした。幼い頃からキリスト教に触れてキリスト教の教義に疑問を抱いていたと言います。一時は東洋思想も深く探求しました。そのような背景もあって、両者の間の「蛇」の解釈に差異が生まれたのかもしれません。

 

ちなみにユングは後に「ミトラ教」に傾注します。ユング自身が男神を「主神」としていたのか、女神を「地母神」性らしき「主神」としていたのかは、私の現段階の知識ではわかりません。

 

著書『リピドーの変容と象徴』の中でユングはこう記しています。「魂の生命力であるリピドーは、太陽によって象徴され、または擬人化されて太陽の性質を備えた英雄の姿となる」。

 

このことからおそらく、ですが前者の可能性が高いのではないかと。「太陽神 = 男神」と捉えるのが一般的ですし、「英雄」という言葉も使っています。ではなぜ「天照大御神」は「女性神」なのか、と世界中の神話にはさまざまな謎がありそうです。

 

話がそれました、つまり「蛇」を「男根の象徴」ではなく「男根崇拝」と結び付けている説はもしかしたら、その人の根底にフロイトの理論の知識があるからなのか、あるいはその人自身が潜在意識で「男神」を「主神」としているかのどちらかなのかもしれません。「男性性」優位、ということ。「男性性」優位がいけないという意味ではなく、本来なら「母神」「地母神」と結び付けそうなものなので、そこにその人の「意識」がみえてくるものなんだな、と感じたまでですが。

 

さらに、蛇、男根で調べたら、以下の内容がヒットしました。

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サーペント(Serpent)はラテン語の(Serpens、Serpentis)を由来とする言葉。英語でヘビの別名。比較的大型の、特に毒蛇に使われる。大蛇。

 

蛇神のこと。男根の象徴ともされ、男性神とされることもある。しかし、本来は大地母神への関わりが深く、ヘビの姿をとる女神も多い。

 

西洋では古き蛇、つまり悪魔の異称として使われる。古代から近世にかけてはドラゴンとかなり混同されていた。サタン、ピュトン、アポピス(アペプ)、ウロボロス、ヨルムンガンドなども参照のこと。

 

東洋では基本的に水神であり、竜と混同されることが多い。八岐大蛇、大物主、タケミナカタ、アシナヅチ・テナヅチ、ナーガ、ケツァルコアトルなども参照のこと。

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在野の民俗学者として有名な吉野裕子氏によれば、日本の古語ではヘビのことを、カガチ、ハハ、あるいはカ(ハ)等と呼んでいたとのこと。

 

「ハハ」とあります。ここにはありませんが「カカ」と呼んでいたとも。

 

私自身はどちらかというと「蛇」の地母神性とのつながりを重視しています。もちろん、「両性具有」のエネルギーという意味で。「母神信仰」は「両性具有」のエネルギー、「父神信仰の一神教」は「神=父=男性」という捉え方をしているといわれています。

 

さて、その他、世界各地の信仰はどんな様子だったのでしょうか。

 

□ ギリシャ神話 ヘビは生命力の象徴

 

□ 古代エジプトの歴代ファラオ 主権、王権、神性の象徴として蛇形記章を王冠に戴いた

 

□ 中国神話や、江戸時代の官学であった道学では、蛇神は道祖として信仰を集めた

 

□ インド神話 シェーシャ、アナンタ、ヴァースキなどナーガと呼ばれる蛇身神が重要な役割を果たしている

 

またこれは今回はじめて知ったことなのですが、

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アメリカ合衆国では「大きな者が侵入してきても敢然と威嚇し、踏みつけられれば反撃する」としてガラガラヘビが"Don't tread on me."(私を踏むな)の標語とともに独立自衛のシンボルとされる。これらの意匠はガズデン旗(英語版)や海軍国籍旗にも用いられる。

↑↑↑

 個人的には意外でした。「独立自衛」のシンボルにアメリカで「蛇」とは。これら上記の内容が「男根」の象徴としての「蛇」なのか「地母神」としての「蛇」なのかはわかりませんが、多くの国、エリアで「蛇」は崇拝対象だったことが明確になってきます。

 

そんな中で【 西洋では古き蛇、つまり悪魔の異称として使われる。古代から近世にかけてはドラゴンとかなり混同されていた。サタン】とあるように特に「キリスト教」では「蛇」を「悪魔、サタン」としています。新訳聖書では蛇は賢さの象徴となるそうです。

 

キリスト教に教化されたエリアでは「蛇」は一般的には「悪魔」、その他のエリアでは「蛇」は「カミ」と正反対の評価になっているのが興味深いところ。

 

個人的に「蛇 = 男根崇拝」という説の多さに素朴な疑問を抱いていたので当エッセイを執筆してスッキリしました。

 

こうしてみてみると、もしかしたらフロイトとユングは「表裏一体」の関係だったのではないかと感じます。フロイトはユダヤ系セム族からみた「救世主」を求めました。ユングはアーリア人からみた「救世主」を求め、自身がその「救世主」になろうとしていたと言われています。深層心理学とはフロイト理論とユング理論のもつれによるものを指すのかもしれない、とあくまで個人的見解です。だからこそあれほどひかれあい、また反目しあった。アドラー心理学は少し系統が異なるような気がしています。

 

いずれにしても人にはすべて多かれ少なかれ「救世主(メサイア)コンプレックス」と「救世主願望」があるもので、男性は特に「救世主願望」が強い人が多いのではないかというのが「いま」私が感じているところ。

 

ユング「心理学」は一時日本の創価学会のテキストとして導入されたことがあるそうです。

 

池田大作氏という「救世主願望」の強い人物とユングの「救世主願望」エネルギーがひかれ合ってのことだったのでしょうか。

 

自らが「救世主」たらんとする場合、もしかしたら「蛇」は両性具有の「地母神」ではなく、「男根」を携えた「男性神」の象徴と捉えることがあるのかもしれません。

 

 

※ 当エッセイは2024/01/24にほぼ執筆していたのですが、ひっかかりがあり、翌日のアップになりました。

 

話がアチコチにとんでいるのは「蛇」の「蛇行性」のエネルギーではないかと感じています。

 

「蛇」に関してはまだ執筆したいことがあるのでこれで完結ということではありません。

 

フロイトとユングの関係、民族としてのアイデンティティなど、かなりバクッと捉えています、本当はもっとディープな解釈をするべきところ、あえて「サラッ」と書きました。

 

両者の深層心理学の理論は難解です。まったく理解できていませんが個人的には「ユング」の理論の方がしっくりくるところがあります。思うところがあって一旦「卒業」。「いま」改めて、「ユング」の分析心理学をかじっておいたことは本当に「勉強になった、ヒントをたくさんもらっていた」と感じています。

 

 

◇ 参考

 

『心のトリセツ』ユング心理学がよくわかる本 長尾剛著

 

ユングのミトラス秘儀参入

 

ヘビ フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

サーペント フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

 

 

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